舞台評No.57 越路吹雪物語
越路吹雪物語
演出 宮田慶子
脚本・音楽監督 高平哲朗
出演 池畑慎之介
高畑淳子 草刈正雄 長谷川稀世
2208/5/14 マチネ 日生劇場
子供の頃にテレビで観た越路吹雪こと“コーちゃん”は、オーバーアクションで濃いメイクと派手な衣装で唄い踊り、でもどこか心にも耳にも残る存在…没後30年近くが過ぎている。
まさにタイトル通りに“越路吹雪”の生涯が3時間弱で描かれる。
観た人誰もが言うように、池畑慎之介が演じる“コーちゃん”は確かに映像で観るのとソックリ。
永遠の親友であり仕事上のパートナーでもあった岩谷時子を演じる高畑淳子も、きっとそっくりなのであろう。
劇場の観客の8割方は私より上の年代、池畑慎之介演じる“コーちゃん”と“日生劇場”に、彼女の伝説の舞台“ロング・リサイタル”を重ね合わせているのであろうか!?…終演後の興奮度はかなりのものであった。
ロング・リサイタルを観る事の出来なかった私には、その感情移入は出来なかったが…。
かつて観た“美空ひばり物語(タイトルが定かではありません…)”もそうだったのだが、これだけの大スターの伝記を取り上げるのは、知られ過ぎているエピソードを抜きには描けないし、本にしても書き足りないエピソードや書けないエピソードもあるのだろうから、脚本にする事はきっと難しいと思う。ましてや、色々な制限のある舞台で上演するのだから尚更の事。
登場人物が実名で演じられる訳だし、観客も出演者のリアル感に拍手を贈るのも当然であろう、それもいた仕方のない事。
ホント難しい…。
舞台ラストのライブはゴージャスでどこか懐かしいが、かと言って懐古的になり過ぎてはいなかった。
越路吹雪の声を口パクではなく池畑慎之介自身の声で唄い演じる躍ることで、その絶妙なバランスと距離感が、新たな越路吹雪像を創り上げているのではないだろうか。
越路吹雪が亡くなった56歳を池畑慎之介氏が迎えたと言うので、このステージがファイナルと言うのが残念でもあるが、とても潔くも感じた。拍手!!!!!!!
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