舞台評No.58 瞼の母
瞼の母
作 長谷川伸
演出 渡辺えり
出演 草なぎ剛 大竹しのぶ
三田和代 高橋克実 高橋長英 梅沢昌代
篠井英介 春海四方 西尾まり 高橋一生
2208/5/15 ソワレ 世田谷パブリックシアター
歌舞伎や新国劇でお馴染み、長谷川伸の股旅ものの名作“瞼の母”
生き別れた母を捜す流れ流れの博徒、番場の忠太郎。しかし、やっと探し当てた母は、ヤクザに身を落した息子を冷たく突き放す…
名ゼリフ「こう上下の瞼を合わせ、じいっと考えてりゃ、逢わねぇ昔のおっかさんの面影が出て来るんだ」と共に母への切ない思いを断ち切って、忠太郎はまた厳しい渡世へと帰ってゆく。
出演者はセリフはこなしていたし殺陣や身のこなしも中々だったのだが、やはり時代劇、特に股旅ものの持つ七五調のセリフや着物の着こなし等や、あの時代の背負っていたものを実感として舞台で表現するのは本当に難しい、改めて感じさせられた。
それは、出演者だけでなく観客側にも責任があるだろう、観客ももっと勉強せねば…この事も改めて感じさせられた。
1時間30分の舞台は休憩も無く、場面転換の繋ぎ方も飽きさせずに素晴らしく、スピーディーであった。
しかし、場面毎の芝居の流れが場面転換によって途切れ途切れになって統一感に欠ける気もした、これは私が観たのが公演が始まって間もない頃だったからであろう、回を重ねる事でよりスムーズに流れていくに違いない。
そして、主役を張れるような役者たちを脇役として贅沢に使うキャスティングは、さすがシス・カンパニー公演であればこそ!
劇場の大半を占めていた若い女性客たちを見て…
こうやって草なぎ剛が“股旅もの”を舞台で演じる事で、もっと若者たちに“股旅もの”そして“長谷川伸”の作品の良さを知ってもらえるのは素晴らしい事である。
それが、氷川きよしが唄う“演歌”で“股旅もの”を知った若者もあったとしても…。
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