舞台評No.59 SISTERS
SISTERS
作・演出 長塚圭史
出演 松たか子 鈴木杏 田中哲司
中村まこと 梅沢昌代 吉田鋼太郎
2208/7/10 ソワレ PARCO劇場
深い余韻のある舞台だった…。
演劇ユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」の長塚圭史が“マイ・ロックンロール・スター(02年)”“ラストショウ(05年)”に続きPARCO劇場に書き下ろす新作。前2作同様に“血縁”がテーマ。
舞台は地方の女主人を亡くして寂れたホテル。ホテルの建て直しのために残された主人は、自分の従兄弟である東京の人気ビストロのシェフ尾崎に新メニューを依頼する為に、新妻の馨と共にホテルへ招く。
ホテルには亡き女主人の兄で小説家の神城と、その娘の美鳥が10年にわたり暮していた。
そして、少し正気を失いかけているベテランのメイド。
やがて馨と美鳥の会話から、馨の封印された過去と美鳥の隠された過去と現在がクロスし明らかになっていく…。
途中休憩のない同じ舞台セットの135分。しかし、そのセットや動きに、シーンの変化を観客それぞれにクイズやパズルのように投げかけてくる。
セリフや動きのひとつひとつを聞き逃したり見逃したり出来ないような、良い意味での圧迫感と緊張感。
さすがに長塚氏の脚本と演出力。
男性が描く女性の怖さ愚かさ悲しさ儚さの中に、母性や神々しさを見たような気がした。
長塚氏曰く「女性が家族、血族という檻の中から出て、自立した人間として立ち上がる作品にしようと思った。人間賛歌を込めているのですが、お客様が終幕に深い闇を見るか、希望を見るか、分かれるかもしれません」(2008/7/7毎日新聞夕刊)
終幕における、あの世とこの世をつなぐ(私にはそう思えたのですが…)舞台上の水とそこに漂う曼珠沙華の赤、そして“水”という衣装をまとった出演者たちは、私にとって“絶望”ではなく、まさに生きる“希望”でした。
松たか子や鈴木杏、梅沢昌代ら女優陣に虚像と実像の両方を感じたような…それは女性であるがゆえなのか!?ただただ凄い、深い…。
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